「フレックスにしています」「裁量労働なので…」
企業のご担当者様からよく耳にする言葉ですが、本当に制度として成立しているか?
そして「運用が適正か?」は、別の話です。
労務デューデリジェンス(労務DD)では、表面的な制度名や規程の記載だけでなく、“実態”として適法に運用されているかを確認します。
特に「労働時間制度」は、残業代の支払い要否に直結するため、リスクの起点になりやすい領域です。
次のようなケースは、実際の労務DDでよく見られます:
・「フレックスタイム制」と言いながら、フレックスタイム制の協定がない..
・「裁量労働制」を導入していると言うが、対象業務や導入手続きが不明確
・「固定残業制」で運用しているが、固定残業金額が明確でない。固定残業を超えた場合に差額残業代が支給されていない。
・就業規則には「9:00〜18:00」とあるのに、現場では朝8時前から会議が開始されている
いずれも、制度と実態のズレが残業代の未払いリスクにつながる典型例です。
「労働時間制度」=企業の働き方の“土台”
労働時間制度とは、単なるルールではなく、その会社の働き方を支える“土台です。
制度の導入に際しては、以下のポイントが求められます:
・就業規則や労使協定に、制度の要件が正しく明記されているか
・導入手続き(労基署届出など)適正に行われているか
・制度に基づいた実際の運用・管理がされているか
・制度ごとに必要な帳票などが整備されているか
特にスタートアップや急成長企業では、「制度は整っているつもりだったが、運用実態が追いついていなかった」というケースも多く、注意が必要です。
あらためて、“制度と実態”の整合性を見直してみてください。
見た目には柔軟な制度でも、労働時間制度の土台が崩れていると、すべての計算が成り立たなくなります。
制度名だけが一人歩きしていないか。運用が労働基準法の要件を満たしているか。
今一度、就業規則、労使協定、勤怠実績を突き合わせて、制度と実態の整合性をご確認されることをお勧めします。