近年、働き方の多様化にともない、「フレックスタイム制」を導入する企業が増えています。特にスタートアップや成長企業では、「社員に自由な時間管理を任せている」「コアタイムなしで働いてもらっている」など、柔軟な制度をPRするケースも少なくありません。
しかし、その制度、本当に“フレックス”として成立していますか?
■ フレックスタイム制には「労使協定」が必須
フレックスタイム制を導入するには、必ず労使協定の締結が必要です(労働基準法第32条の3)。この協定では、以下のような項目を定める必要があります。
・清算期間の長さ(例:1か月以内)
・清算期間における総労働時間
・標準となる1日の労働時間 など
この労使協定がない場合、たとえ現場で「フレックスタイムっぽい」運用がなされていても、労基法上は成立しておらず、違法な労働時間管理となってしまいます。
■ 労務DDでも「協定未締結」や労使協定の不備は頻出パターン
労務デューデリジェンスの現場では、「フレックスにしています」と話す企業の多くで、実際に協定を確認してみると…
・協定自体が存在しない
・協定に必要な項目が欠落している
といったケースが頻繁に見受けられます。
制度として導入したつもりが、単なる「裁量的な勤務時間の許容」にとどまり、法的には何の裏付けもない状態となっているケースがあります。
■ 柔軟な働き方には「土台となる制度設計」が必須
働きやすさを実現するための制度こそ、法的な手続きを踏んだ設計と運用がセットで求められます。
フレックスタイム制の導入をお考えの企業、あるいは既に導入済みの企業も、次の点を今一度ご確認ください。
〇フレックスタイム制の労使協定を締結しているか
〇協定には必要な項目が記載されているか
■ 最後に:制度と実態の整合性が重要
「フレックスタイム制」と名乗ること自体は簡単ですが、制度の裏付けがなければ、残業代トラブルや労働基準監督署からの是正勧告につながるリスクがあります。