働き方改革や生産性向上の文脈から、「フレックスタイム制」を導入する企業が増えています。とくにIT企業やスタートアップを中心に、「社員が自分で始業・終業時間を決められる柔軟な制度」として定着しつつあります。
しかし、その“柔軟性”、本当に制度として機能していますか?
■ フレックス導入企業に多い「実態のズレ」
労務DD(労務デューデリジェンス)の現場でよく見かけるのが、次のようなケースです:
・就業規則・協定上はフレックスタイム制を導入している
・コアタイムは「11:00~15:00」と明記されている
しかし実際には「毎朝9:00に全社会議」「18:00に進捗共有ミーティング」などが日常的に設定されている
これでは、制度上は自由に出社・退社できるはずが、実態としては“全員が9:00〜18:00で働かざるを得ないという状況になっています。
■ “実質的な所定労働時間”とみなされるリスク
このように、コアタイム以外の時間帯に定期的・継続的な会議や朝礼が設定されている場合、「実質的にフレックスタイム制が成立していない」という指摘を受ける可能性があります。
特に、毎朝の定例ミーティングが8:30や9:00にある場合、「事実上の始業時刻」とみなされる可能性が高く、制度としての正当性が揺らぎます。
■ フレックス制度の真の柔軟性を守るために
制度が「名ばかり」にならないためには、次の点に注意が必要です。
〇コアタイム外に定期的な会議・業務指示を設定していないか
〇定例ミーティングが「任意参加」になっているか(実質強制でないか)
〇会議は業務の支障がない限り、コアタイム内に集中させる
■ 制度と実態が一致してこそ「労務リスク」は回避できる
フレックスタイム制は、企業にとっても社員にとっても有益な制度です。
ただし、そのメリットを最大限に活かすには、「制度設計」と「実態運用」の整合性が不可欠です。
「コアタイムは形だけ、実際は全員が9時から勤務」
そんな状態では、法的な制度としては成立していないと判断されても仕方ありません。
■ 最後に
柔軟な制度を整えたつもりでも、実際の運用にズレが生じるのはよくあることです。
今一度、フレックスタイム制の運用実態をご確認ください。