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お知らせ

福岡エリア対応開始のお知らせ

このたび安藤社会保険労務士法人では、東京に加え、福岡エリアでのサービス提供を開始いたしました。
福岡では、IPOを目指すスタートアップ企業様を対象に、

・労務デューデリジェンス(労務DD)
・労務改善コンサルティング
・社会保険手続きや給与計算業務などのアウトソーシング

といった多面的なサービスをご提供いたします。
東京において数多くの上場準備企業を支援してきた実績と、労務リスクの分析、制度設計、監査対応のノウハウを活かし、福岡エリアの成長企業を実務と戦略の両面から強力に支援いたします。
対応は基本的にオンラインを中心としたリモート支援となりますが、ご要望に応じて柔軟な対応も可能です。
IPO準備に向けた労務管理体制の構築、就業規則の見直し、未払い残業リスクの洗い出し、さらに、継続的な労務業務の外部委託(アウトソーシング)をご検討の企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

▶ ご相談・お問い合わせは [お問い合わせフォーム] より受け付けております。

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労務DDで多い指摘事項

労務DDの最初のチェックポイント その① 「年間休日数」の確認がなぜ重要か?

皆さまの会社の「年間休日数」、きちんと確認できていますか?

 

「就業規則には125日と書かれているけれど、実際の会社カレンダーは115日だった」

こうしたズレは、毎月の給与計算や残業代の計算に大きな影響を及ぼします。

 

私たちが労務デューデリジェンス(以下、労務DD)を実施する際、最初に確認するのがこの「年間休日数」です。一見地味な数字ですが、非常に重要な意味を持っています。

 

年間休日数のズレが残業代の未払いにつながる

残業代の単価を算出する際には、年間休日数をもとに「1ヶ月平均所定労働時間数」を計算します。

その労働時間数を分母にして、基本給や諸手当などの金額を割って「1時間あたりの残業単価」を算出するため、ここに誤差があるとすべての残業代計算が狂うことになります。

 

例えば──

 

就業規則上は年間休日125日(所定労働時間:月平均160時間)だが、実際は年間休日115日だった場合、本来の月平均労働時間は約163時間。

・年間休日125日の場合、(365日-125日)×8時間÷12カ月=160時間

・年間休日120日の場合、(365日-120日)×8時間÷12カ月=163時間

 

この場合、同じ30万円の基本給でも

→ 160時間で割れば:1,875円/時

→ 163時間で割れば:約1,840円/時

わずか数十円の差のように見えても、毎月30時間の残業がある社員の場合、年間で1万円以上の未払いが発生する可能性があります。

 

「定額残業代」「みなし残業制度」でも同様のリスク

特にスタートアップ企業などでよく見られる定額残業代やみなし残業制度では、「○時間分を固定で支払う」といった設計がなされていますが、この固定時間の前提となる所定労働時間がずれていると、本来支払うべき金額に満たないケースが発生します。

 

「定額で払っているつもりでも、実は不足していた」

このような事態は、労使トラブルや労基署の調査で明るみに出ると、遡っての支払い対応や制度の見直しを余儀なくされることも少なくありません。

 

今一度、制度と実態のズレをご確認ください

制度設計や給与体系に自信があっても、こうした基礎数値のズレが、思わぬリスクを招くことがあります。

就業規則・年間カレンダー・賃金規程の内容が一致しているか、今一度、確認されることを強くお勧めします。

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労務DDで多い指摘事項

ハラスメント対策の重要性 – 未整備が招く重大リスク

労務DDにおいて、近年特に注目されているのが「ハラスメント対策」です。2020年6月のパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)の施行により、企業にはハラスメント防止のための措置が義務付けられました。しかし、多くの企業で対策が不十分であり、M&A時の労務DDでも重要な指摘事項となっています。

ハラスメント対策が求められる背景

ハラスメントは、被害者の心身の健康や職場環境に深刻な影響を与えるだけでなく、企業にとっても以下のようなリスクをもたらします。

1. 法的リスク
損害賠償責任、行政指導、是正勧告など

2. 人材リスク
離職率の上昇、採用難、生産性の低下

3. 風評リスク
企業イメージの低下、顧客・取引先からの信頼喪失

M&A時の障壁
労務DDでの重大な指摘事項となり、取引条件悪化や中止の原因になることも

2022年4月からは中小企業(従業員数100人以下)にもパワハラ防止措置が義務化され、企業規模を問わずハラスメント対策の重要性が高まっています。

労務DDにおける主な指摘事項

当法人が実施する労務DDでは、ハラスメント対策に関して以下のような問題が頻繁に見受けられます。

1. 社内規程の不備
ハラスメントの定義、禁止行為、相談窓口、調査・対応手順などを定めた規程がない、または内容が不十分(セクハラ・マタハラのみで、パワハラやその他のハラスメントに対応していないなど)というケースが多く見られます。

2. 相談窓口の機能不全
形式的には相談窓口を設置しているものの、実際には機能していない(担当者が兼務で対応できない、専門知識がない、窓口の存在が周知されていないなど)ケースが見られます。

3. 実効性のある研修の未実施
ハラスメントに関する研修が行われていない、または形式的な実施にとどまり、特に管理職向けの実践的な研修が不足しているケースが多くあります。

4. 事案発生時の対応体制の不備
ハラスメント事案が発生した際の調査手順、被害者保護措置、加害者への対応基準などが明確になっておらず、場当たり的な対応になっているケースが見られます。

5. 記録の不備
過去のハラスメント事案について、相談内容や調査結果、対応措置などの記録が適切に保管されていないケースがあります。これは労務DDにおいて重要なリスク要因と判断されます。

効果的なハラスメント対策のポイント

実効性のあるハラスメント対策を構築するためのポイントは以下の通りです。

1. 包括的な社内規程の整備
パワハラ、セクハラ、マタハラ、SOGIハラ(性的指向・性自認に関するハラスメント)、カスタマーハラスメントなど、様々なハラスメントを包括的にカバーする規程を整備します。特に、「何がハラスメントに該当するか」の具体例を示すことが重要です。

2. 実効性のある相談窓口の設置
内部窓口だけでなく、外部の専門家(弁護士など)による外部窓口の併設が効果的です。また、窓口担当者への専門研修も重要です。相談者のプライバシー保護と不利益取扱禁止を明確にすることで、相談しやすい環境を整えます。

3. 階層別・目的別研修の実施
一般社員向け、管理職向け、相談窓口担当者向けなど、対象者に応じた研修内容を設計します。特に管理職には、「グレーゾーン事例」を用いた討議形式の研修が効果的です。

4. 事案対応フローの確立
相談受付→事実確認調査→判断・措置→フォローアップという一連の流れを明確化し、担当者や判断基準を事前に定めておきます。被害者保護と加害者対応の基準も明確にしておくことが重要です。

5. 定期的なリスクアセスメント
職場環境調査やストレスチェック結果などを活用し、ハラスメントリスクの高い部署や状況を定期的に把握・対策します。

実際の改善事例

IT企業では「若手社員へのOJTの一環」と称して行われていた厳しい指導が実質的なパワハラに該当するとの指摘を受け、OJTマニュアルの見直しと管理職向けコミュニケーション研修の実施によって改善。若手社員の定着率向上につながりました。

M&A時にハラスメント対策が重視される理由

M&Aにおいては、ハラスメント対策の状況が重要な審査項目となっています。その理由は以下の通りです。

1. 潜在的な法的リスクの存在
過去のハラスメント事案や対策不備による将来的な訴訟リスクを評価する必要があります。

2. 企業文化の評価
ハラスメント対策の状況は、企業文化や人材マネジメントの質を測る重要な指標となります。

3. PMI(買収後統合)の難易度予測
ハラスメントに対する考え方やポリシーの違いは、買収後の組織統合における障壁となる可能性があります。

まとめ

ハラスメント対策は、単に法令遵守の問題ではなく、人材の確保・定着や生産性向上、企業価値の維持・向上に直結する経営課題です。特にM&A時の労務DDでは重点的にチェックされる項目であり、形式的な対応ではなく実効性のある対策が求められます。

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労務DDで多い指摘事項

労働時間の適正な把握 – PCログとの乖離に要注意

労務DDにおいて、近年特に重要性が増している項目が「労働時間の適正な把握」です。特に働き方改革関連法の施行や裁判例の蓄積により、企業に求められる労働時間管理の水準は年々高まっています。今回は、労働時間の把握における問題点と対策、特にPCログなどの客観的記録との乖離確認の重要性について解説します。

労働時間の適正な把握が求められる背景

2019年4月に施行された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)では、使用者に対して労働時間を適正に把握するために必要な措置を講ずることを求めています。このガイドラインは法的拘束力こそないものの、労働基準監督署の監督指導や裁判の判断基準として参照されるため、実質的な遵守が必要となっています。

また、長時間労働による健康障害(過労死・過労自殺など)の防止や、未払い残業代の発生防止といった観点からも、労働時間の正確な把握は企業のリスク管理上必須となっています。

労務DDにおける主な指摘事項

当法人が実施する労務DDでは、労働時間管理に関して以下のような問題が頻繁に見受けられます。

1. 自己申告制の不適切な運用
自己申告制を採用している企業で、実態と乖離した申告(過少申告)が常態化している、または会社側が残業時間の上限を設定し実際の労働時間と関係なく申告させているなどの問題があります。

2. 客観的記録との乖離
タイムカードやICカードの打刻時間と、PCログ(ログイン・ログアウト記録)、入退館記録などの客観的記録との間に乖離があるにもかかわらず、その確認・是正を行っていないケースが多くあります。

3. 管理対象となる「労働時間」の範囲の誤解
「会社が指示した時間だけが労働時間」「残業申請した時間だけが労働時間」といった誤った認識により、実際には労働時間に該当する時間(準備作業や後片付け、自己研鑽と称した実質的業務など)を労働時間として扱っていないケースがあります。IPO準備中の企業でも乖離時間を自己研鑽、自己学習として申告しているケースが多いように感じますので適正な労働時間把握が求められます。

4. 管理体制の不備
労働時間の記録はあるものの、それを誰がどのようにチェックし、問題がある場合にどう対応するかという管理体制が不明確または形骸化しているケースが見られます。

PCログとの乖離確認の重要性

特に近年の労務DDや労働基準監督署の調査、また労働紛争においては、PCログなどの客観的記録と申告労働時間との乖離が重要な争点となっています。

1. PCログが「労働時間」の証拠として認められる傾向
多くの裁判例において、PCのログイン・ログアウト記録は労働時間の有力な証拠として認められています。「PCを使用しなくても業務は可能」との反論は、情報化が進んだ現代のオフィスワークにおいては説得力を失いつつあります。

2. 「乖離放置」のリスク
PCログと申告労働時間との乖離を会社が認識しながら放置していた場合、黙示の残業承認と判断され、未払い残業代の支払い義務が生じる可能性が高まります。

3. 乖離の原因分析と是正の必要性
労務DDにおいては、単に乖離の有無だけでなく、乖離が生じる原因(業務の特性、労働者の意識、管理者の指導不足など)を分析し、是正策を講じているかどうかも重要なチェックポイントとなっています。

適正な労働時間把握のためのポイント

労働時間を適正に把握するためのポイントは以下の通りです。

1. 客観的な記録方法の採用
タイムカード、ICカード、生体認証、PCログなど、客観的な方法で労働時間を記録する仕組みを導入することができないか検討します。自己申告制を採用する場合も、これらの客観的記録との乖離チェックを行うことが必要です。

2. 定期的な乖離チェックの実施
月次や四半期ごとに、PCログなどの客観的記録と申告労働時間との間に乖離がないかチェックします。特に深夜や休日の記録、恒常的に乖離が生じている社員のパターンには注意が必要です。

3. 乖離時の対応フローの確立
乖離が発見された場合の対応手順(事実確認、原因分析、必要に応じた労働時間の修正、再発防止策の実施など)を明確化します。

4. 労働時間管理に関する教育
管理職・一般社員双方に対して、「労働時間」の定義、適切な申告の重要性、不適切な労働時間管理のリスクなどについて定期的に教育を行います。

5. 業務実態に合わせた管理方法の選択
テレワークやフレックスタイム制など多様な働き方に対応した労働時間管理の方法を検討します。特にテレワークではPCログや業務システムのアクセスログなどの活用が有効です。

実際の改善事例

IT企業では「自己研鑽」と称して深夜や休日にPCにログインし業務を行う社員が複数発見されました。会社として明確に「自己研鑽の名目での業務禁止」を通達し、PCの使用制限を設けるとともに、適切な業務配分と納期設定を行うことで改善しています。

まとめ

労働時間の適正な把握は、法令遵守の観点だけでなく、従業員の健康管理や生産性向上の観点からも重要な経営課題です。特にPCログなど客観的記録との乖離確認は、未払い残業代のリスク回避のために必須となっています。今や労働時間の長さが労災等にも直結する時代となっています。労務管理の根っこである労働時間管理についてはどこの企業も徹底して意識する必要があります。

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お知らせ

スタートアップ限定|オンライン無料相談のご案内(1時間)

「ちょっと話を聞いてほしい」——そんなスタートアップの皆さんへ。

 

安藤社会保険労務士法人では、創業間もないスタートアップの方を対象に、1時間限定のオンライン無料相談を実施しています。

 

この取り組みは営利目的ではありません。

むしろ、原点に立ち返るような気持ちで、今の私にできることをお届けしたいと思っています。

 

■スタートアップとの原点

私が初めてスタートアップ(当時は“ベンチャー企業”と呼ばれていました)と出会ったのは、20年以上前のことです。

当時はまだ私自身も駆け出しの社会保険労務士。右も左も分からず、ただ目の前のその会社の仕事を一生懸命にこなすことで精一杯でした。

 

その会社はその後、上場を果たし、今では誰もが知る企業となりました。

今でも、そこで出会った方々とはご縁が続いています。

 

この経験が、私のスタートアップ支援の原点であり、

以来、数多くのスタートアップとともに歩んできました。

 

クラウド型の給与計算システムや勤怠管理、人事労務アプリケーションなど、

最新のITツールをフルに活用しながら、時代に合わせた支援を行ってきたのも、そうした出会いの積み重ねがあったからです。

 

■今だからこそ「無料」でやりたい理由

現在、少し時間に余裕ができたこともあり、このタイミングを活かして「スタートアップの若い方の相談に乗る場を持ちたい」と考えました。

 

もちろん、将来なにかのご縁に繋がるかもしれません。

でも、今は“聞いてよかった”と感じてもらえる1時間にしたい、それが何よりの目的です。

 

■対象

創業5年以内、または従業員30名以下のスタートアップ

 

■方法

オンライン(Zoom/Google Meet等)※日程確定後に詳細をご案内します

 

■時間

1回1時間/完全予約制

 

■料金

無料

 

「これって相談していいのかな?」という内容でも構いません。

IPOを見据えた人事体制の整え方、トラブル予防のための制度設計、

クラウドツールの選定相談など、

どんなことでもお気軽にお話しください。

 

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労務DDで多い指摘事項

36協定の遵守状況チェック – 形骸化の実態とリスク対策

労務DDにおいて、最も重要視される項目の一つが「36協定の締結と遵守状況」です。特に近年は働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が厳格化されたことで、36協定の遵守状況は労務リスクの中でも最優先の確認事項となっています。

36協定とは

36協定とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合に、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と使用者との間で締結する協定のことです。

この協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることで、協定の範囲内で法定時間外労働・法定休日労働をさせることが可能となります。

労務DDにおける主な指摘事項

当法人が実施する労務DDでは、36協定に関する以下のような問題が非常に多く見受けられます。

1. 協定内容と実態の乖離
最も多いのは、36協定で定めた時間外労働の上限時間を超過しているケースです。「特別条項付き36協定を締結していても、その上限(年720時間等)を超えている」「月45時間、年360時間の原則的上限のみの協定なのに、実際には恒常的に超過している」といった事例が散見されます。

2. 特別条項の運用不備
特別条項の発動要件や手続きが明確になっていない、あるいは形骸化しているケースが多く見られます。特別条項を発動する際は「臨時的な特別の事情」が必要であり、その都度「従業員代表へ通告する」、「所属長及び従業員に通告する」などが求められますが、実際には「毎月発動している」「発動の記録がない」といった実態があります。

3. 対象業務や時間外労働の考え方の誤解
「残業代を支払っていれば36協定は関係ない」といった誤った認識により、36協定を締結していないケースすらあります。

4. 届出の不備
協定は締結しているものの労働基準監督署への届出を行っていない、または協定期間が切れているにもかかわらず更新していないといった基本的な不備も少なくありません。36協定は、届出が効力発生要件になりますので要注意です。

36協定遵守における具体的なリスク

36協定の不備や違反は、以下のようなリスクをもたらします。

1. 法的リスク
労働基準法違反として、是正勧告や罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。

2.レピュテーションリスク
労働基準監督署の是正勧告や労働紛争は、企業イメージの低下につながります。特にM&A時には取引条件の悪化や中止の理由となることも珍しくありません。

3. 人材リスク
過重労働による健康障害や離職の増加は、人材の流出や採用難につながります。

36協定遵守のためのポイント

36協定を適切に管理するためのポイントは以下の通りです。

1. 実態に合った協定内容の設計
業務の繁閑や特性を踏まえ、実態に即した協定内容を設計します。ただし、法定の上限(年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満等)は遵守する必要があります。

2. 労働時間の把握と管理体制の構築
客観的な方法による労働時間の把握(タイムカードやICカード、PCログ等)と、協定時間に近づいた際のアラート機能など、管理体制を整備します。

3. 特別条項の適切な運用
特別条項の発動要件を明確にし、発動の際は都度協議・記録を残すなど、適切な運用手続きを確立します。

4. 定期的なモニタリングと改善
月次や四半期ごとに36協定の遵守状況をチェックし、問題がある場合は迅速に改善策を講じます。

実際の改善事例

ある製造業では、労務DDによって特定部署で恒常的に36協定の上限を超過していることが判明しました。原因分析の結果、特定の熟練者に業務が集中していたことが判明。多能工化の推進と業務の平準化により、6か月後には全社で36協定の範囲内に収めることに成功しました。

また、ITサービス業では、客先常駐社員の労働時間管理が不十分で、36協定違反が常態化していました。客先との契約条件の見直し、リモートワークの活用、社内の業務効率化により、時間外労働の大幅削減を実現しました。

まとめ

36協定は単なる「紙の上の手続き」ではなく、労働者の健康と企業の法令遵守を両立させるための重要な仕組みです。労務DDでは特に重点的にチェックされる項目であり、形式的な締結だけでなく実効性のある運用が求められます。上場審査の際にも証券会社が最も重要視するポイントになっています。労働法に関するコンプライアンス意識が欠如していると理由から上場延期になるケースも珍しくはありません。

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労務DDで多い指摘事項

従業員代表の選出方法 – 適切な手続きで無効リスクを回避

労務DDにおいて、「36協定」「フレックスタイム制に関する労使協定」「就業規則の意見聴取」など、様々な場面で登場する「従業員代表」の選出方法について、多くの企業で指摘事項となっています。

従業員代表とは

労働基準法では、労使協定の締結や就業規則の作成・変更の際に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(従業員代表)と使用者との間で締結することが義務付けられています。

この従業員代表は、単なる「会社側が指名した人物」や「役職上の上位者」ではなく、適切な手続きで選出されなければなりません。

労務DDでの主な指摘事項

当法人が実施する労務DDにおいて、従業員代表に関して最も多い指摘事項は以下の点です。

1. 選出手続きの不備またはエビデンスの不足
「総務部長が自動的に従業員代表になっている」「特に選挙は行わず慣例で決めている」という企業が少なくありません。また、選出手続きを行ったとしても、その証拠となる書類(選出公示文書、投票用紙、集計結果など)が保管されていないケースも多く見られます。

2. 管理監督者を従業員代表に選出
管理監督者(労働基準法第41条第2号に該当する者)は従業員代表になることができません。しかし、「部長だから」という理由だけで選出されるケースが少なくありません。

3. 選出の範囲が不適切
事業場ごとに選出すべきところ、全社で一人だけ選出している、あるいは協定の対象範囲と選出母体が一致していないケースがあります。

適切な従業員代表の選出方法

リスクを回避するための適切な従業員代表の選出方法は以下の通りです。

1. 選出前の告知
何のために(〇〇労使協定を締結するため、就業規則を改定するためなど)従業員代表を選出するのかを明確にして、全従業員に対して事前に告知します。この際、立候補や推薦の方法、選出方法についても明示します。

2. 適格性の確認
労働基準法に規定する管理監督者ではないことを確認します。

3. 民主的な手続きによる選出
挙手、投票など、民主的な方法で選出します。

4. 記録の保管
選出過程を記録した書類(選出公示文書、投票用紙、集計結果、選出証明書など)を保管します。労働基準監督署の調査の際に提示を求められることがあります。

5. 任期の設定と再選出
任期を設定し(最長でも1年)、任期満了時や退職時には再選出の手続きを行います。従業員代表選出規程などを作成しておくことをお勧めします。

実際の指摘事例

ある企業では、長年にわたり総務部長が自動的に従業員代表となり36協定を締結していましたが、労務DDの結果、この選出方法が不適切であると指摘されました。改善後、適切な手続きで選出された従業員代表との間で36協定を再締結しましたが、過去の協定の有効性については懸念が残りました。

また別の企業では、部門ごとに従業員代表を選出していましたが、36協定は事業場単位で締結すべきところ、各部門の代表者が個別に締結していたため、協定自体の有効性が問題となりました。

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労務デューデリジェンス(労務DD)とは?

IPO前に必須の労務デューデリジェンスとは?

IPO(株式上場)は企業にとって大きな節目であり、社会的信用や資金調達力を高める大きなチャンスです。一方で、上場に向けては厳格な審査や監査をクリアする必要があり、その中でも近年ますます重要性が高まっているのが「労務デューデリジェンス(労務DD)」です。

労務DDが求められる理由

労務DDとは、企業の労務管理が労働基準法をはじめとした法令に適合しているかを確認するプロセスです。特にIPO前には、以下のような項目が重点的にチェックされます:

  • 未払い残業の有無
  • 雇用契約や就業規則の整備状況
  • 労働時間管理体制の適正さ
  • 定額残業代制度の適法性
  • 管理監督者の適正な運用
  • 労使協定(36協定など)の締結と実効性
  • ハラスメント対応体制の整備状況

これらの項目に不備があると、上場審査の過程で指摘を受け、スケジュールの遅延や企業評価への影響が生じるリスクがあります。

労務DDの進め方

当法人では、次のようなステップで労務DDを実施しています:

1. 現状分析 – 労務管理の実態を把握

2. リスク評価 – 法令違反や未払いリスクの抽出

3. 文書確認 – 雇用契約、規程、訴訟記録などのチェック

4. インタビュー – 管理層や従業員からのヒアリング

5. 改善提案 – リスクに応じた是正提案の提示

6. フォローアップ – 改善状況の継続的な確認

これらを通じて、IPO審査に耐えうる「労務コンプライアンス体制」を整備するお手伝いをいたします。

ご希望に応じて、以下のような追加オプションもご提供可能です:

  • 勤怠管理システムの導入・見直し
  • 管理監督者区分の見直し支援
  • ハラスメント防止体制の構築支援
  • 弁護士との連携によるリスクマネジメント強化

上場準備を万全に進めるためにも、早い段階での労務DDの実施をおすすめいたします。
まずはお気軽にご相談ください。

◇業務内容>IPO労務(労務監査・労務DD)>

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