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労務コンプライアンス

トピックス・事務所だより

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労働実務Q&A

労働者から休憩時間が一切取れなかったと主張されたとき、認められる場合はどんな時か

ケースによりますが、業務内容に照らして常識的に休憩がとれないことが不合理と判断される場合には、休憩を取得したと認められる場合もあります。
ただし、一切取れなかったとの主張は、それが認められるに足りる業務の実態が具体的に示されなければ困難といえます。

使用者側の与えたとの主張が認められなかった裁判例(高裁:医療法人衣明会事件)
ベビーシッターが子どもから完全に目を離してよい時間を特定して明確に定めていなかったこと、夜のコマの勤務において、子どもと同室で仮眠する時間があったとしても、何らかの問題が発生した場合等においては、ベビーシッターとして直ちに対応することが求められていたというべきであるから、この夜のコマにおいては、その労働密度の濃淡はともかく、使用者の指揮命令下から外れて労働からの解放が保障された1時間の休憩時間があったものと認めることはできない。とし、拘束時間自体の9時間とその前後の引き継ぎに必要な時間も含めて労働時間と認められました。

労働者側の取得できなかったとの主張が認められなかった裁判例(地裁:プロッズ事件)
労働者が少なくとも他の労働者の2倍の労働時間が必要であって、休憩時間についても一切取得できなかったと主張したが、1年10か月におよぶ請求期間を通じて、ほとんど休憩を取らずに1週間に100時間近い実労働に連続して従事するなどということはおよそ不可能である。また、原告が、連続して長時間勤務に従事しているにもかかわらず、一定の労務提供が可能であったことにかんがみれば、明け方近くに退勤しているような日については、勤務中に休息及び仮眠を取るための休憩時間を取得したものとみるのが自然である。そこで、退勤時刻が27時を過ぎる日については、24時以降に少なくとも2時間の休憩を取ったものと推定する。と、休憩時間を直接示す客観的な証拠はありませんでしたが、労基法上義務付けられている程度の休憩は取得し得たと判断しました。

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労働実務Q&A

割増賃金の計算における時間外労働の端数処理は可能か

労働時間は、たとえ「1分」であっても労働時間としてカウントしなければいけません。

以下の事務簡便を目的とした端数処理については、法違反として取り扱いされないものとされています。

①1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各合計時間に1時間未満の端数があるときに30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること

②1時間当たりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じたときに50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること

③1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各割増賃金の総額に1円未満の端数があるときに50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること

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労働実務Q&A

緊急呼び出しに備えた自宅待機の時間は労働時間か

労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを指します。労働者が抽象的に拘束されているに過ぎない場合は含まれません。例えば、所定休日に緊急の呼び出しに備えて携帯電話等を所持して自宅待機している場合に、結果的に呼び出しが行われず使用者の指揮命令が直接およばなかったのであれば、別段の合意がある場合を除き賃金・手当の支払い義務はありません。

自宅における待機時間につき、労働時間には当たらないとした裁判例
(高裁:奈良県(医師時間外手当)事件)
自主的に宅直当番を決め、宿日直の医師1名では対応が困難な場合に宅直医師が協力して診療を行う宅直制度について、医師が自主的に宅直勤務を申し合わせて定められたものであり、宅直当番に当たる医師の名前が使用者に報告されることは無かったこと、呼び出し回数は年6~7回と少ないこと、使用者が明示または黙示の業務命令を発したとは認められないとして、待機時間にかかる労働時間性を否定。

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労働実務Q&A

原則の退社時刻を過ぎた、持ち帰り残業に対する時間外手当等は、支払わなければならないか

自宅で行った仕事が使用者の指揮命令下のもとになされたかものか否かで判断します。三菱重工長崎造船所事件の最高裁判例では、「労働時間とは、使用者の指揮命令下におかれている時間」と定義されており、単に労働者が労務を提供する時間ということではありません。帰宅後の仕事については、例えば動画を見ながら、お酒を飲みながら行っているということもあり得ます。会社に出社した状態での勤務とも大きく異なり、 原則として労働基準法上の労働時間ではないと考えられるため、時間外手当、深夜勤務手当等を支払う義務はないと考えられます。

ただし、管理者が部下に対し、自宅で仕事を完成させてくるよう指示した場合や、携帯電話や電子メールで自宅にいる部下に対し、作業を指示しているといった事実関係があった場合には、指揮命令下にあるものと考えられ、労働時間と判断されるものと考えられますので、どのような経緯で行われた仕事なのかを確認する必要があります。

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労働実務Q&A

タイムカードの所定労働時間帯除く打刻は、すべて時間外労働か

必ずしもタイムカードの打刻時間をもって、その全てを労働時間として扱う必要はありません。厚生労働省:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日)においても、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、労働時間を確認するよう述べているにとどまります。例えば、始業時刻が9時とされているときに、余裕をもって15分前に出勤することは通常ですので、使用者の指揮命令下に置かれて、業務を命令されていない限りは時間外労働時間とはいえません。なお、8時45分からの朝礼参加を義務付けていたり、フロアの清掃を義務付けているような場合は、15分間については時間外労働となりますので、計算していない場合は未払い残業代が発生します。始業時刻は所定時刻どおりとしつつ、終業時刻はタイムカードの打刻時間を採用するといった方法も考えられますので、ルール等具体的に検討しておく必要があります。

タイムカードによって実労働時間を認定しなかった裁判例
①(地裁:三好屋商店事件)
タイムカードの打刻時間が所定の労働時間の始業もしくは終業時刻より早かったり遅かったとしても、それが直ちに管理者の指揮命令の下にあったと事実上の推定をすることはできない

②(地裁:北陽電機事件)
被告におけるタイムカードも従業員の遅刻・欠勤を知る趣旨で設置されているものであり、従業員の労働時間を算定するために設置されたものではない(中略)同カードに打刻・記載された時刻をもって直ちに原告らの就労の始期・終期と認めることはできない

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労働実務Q&A

従業員の自主的居残りは残業時間か

一律に定めることはできませんが、自発的居残りか否か、その労働を行うことの業務上の必要性と使用者の認容意志が認められるかによりますので、惰性的環境が認められる場合は、ルールの再確認を行う必要があります。例えば、しばしば見受けられるケースで終業時刻を過ぎても社内で同僚同士会話を続けているといった場合には、まずはタイムカードを押させ、社外に出てもらうといった対策をとれば、労働時間管理・残業代支払いの観点からも安心といえます。

認める判例(地裁:とみた建設事件)
使用者の指示に基づかない場合には割増賃金の対象とならないと解すべきであるが、原告の業務が所定労働時間内に終了し得ず、残業が恒常的となっていたと認められるような場合には残業について被告の具体的指示がなくても、黙示の指示があったと解するべきである。

認めない判例(高裁:吉田興業事件)
就業開始時刻である午前8時より前に行った労働および公団職員の退庁後にしたものであっても翌日の就業開始後にすれば足りる後片付け等をした労働は、指示に基づくものとは認められず、自発的な行為

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