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労務コンプライアンス

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労働判例・裁判例

裁判例【高裁:東芝総合人材開発事件】 単純作業指示されパワハラと拒否し解雇 業務の変更は懲罰といえず

<原告Xの従前業務内容>
グループ会社各社に技能職として入社する新規高卒者等の訓練生の教育訓練を行う技能訓練校(以下「スクール」)に配属されていた。スクールにおいて、教育訓練担当講師との日程調整、年間授業のコマ割り、行事日程案の作成、日々の訓練や行事運営のサポート業務、一般教養関係科目の講師業務等を行っていた。

<会社を批判するメールを顧客に送信>
Xは、グループ会社の関係者等に対し、前期報告会議事録についての連絡と題するメール(以下「本件メール」)を送信した。その内容は、「①前期報告会について、開催前は担当するように言われたのに、180度変わり、当方が担当ではないのに余計な事をしたと言われたから、議事録を含め、今後一切対応しない②学科講師による訓練生の職場環境見学も、理由、説明、報告もなく、取りやめになった③派遣元窓口への報告会や評価制度についても、現在の訓練校では、グループMTGもなく、学科講師の振返り会、報告会ともに、責任を持てない④振返りでも、各実技指導員からの書面での報告がないことをお詫びする⑤訓練生の成績を報告するだけで精一杯の状況である」との記載があった。

<会社の対応およびXの反応>
本件メールの送信につき、Xに反省文の作成を指示し、これを受けてXは形式的には反省文を作成したものの、その内容は校長および会社組織を批判するものであった。校長は、翌日以降も反省文作成の指示を継続したが、Xは同様の反省文を提出し続けた。校長はXに対し、マーシャリング作業(実習に用いる部品の仕訳作業)を指示(以下「本件業務指示」)したが、Xがこれに従わなかった。会社は①本件業務指示に従わないこと、②本件メールにより関係先に無用な混乱を招来させたこと、③5ヶ月に亘り、従前執務していた事務室の自席ではなく、講師控室での執務を正当な理由なく継続したことを理由に、Xを譴責処分とした。譴責処分後もXが本件業務指示に従わないことを理由に、Xを出勤停止1日の懲戒処分とした。会社は、Xが出勤停止処分後も本件業務指示に従わない状態を継続していることを理由として、Xに対し解雇の意思表示をした。

<判決のポイント>
Xに、組織の基本(上司の指示に従うこと、上司から指示された業務を行う義務があること)を体得させるという業務上の必要性があった。十分な反省と改善がみられるまで、従前の業務と異なる外部との接触のない業務行わせることは、誠にやむを得ないものであった。また業務上必要のないパワーハラスメントが行われたと評価するには、無理があるとした。

<実務上のポイント>
メール送信から解雇まで約1年を経過しており、我が国における解雇の困難さを示している。メールの送付を直接・関節の理由とするのではなく、業務変更を行い、その後の不順守を理由としている。譴責、出勤停止懲戒と処分のプロセスも踏んでいることから、使用者としては性急に解雇せず、指導・記録を続け外堀を埋める作業に注力せざるを得ない。

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労働判例・裁判例

裁判例【地裁:狩野ジャパン事件】疾患未発症でも長時間労働を理由とする損害賠償請求が認められた例

<概要>
元従業員Xが、2年間にわたり毎月100時間以上残業したことで、精神的苦痛を被ったとして慰謝料等を求めた。裁判所は、会社は長時間労働で健康を損なわないよう安全配慮義務を負うと判断。心身の不調など疾患を発症していなくても、タイムカードの時刻から労働状況を改善指導すべきところこれを怠ったもので、未払割増賃金とともに慰謝料30万円の支払いを命じた。

<どのような会社であったか>
・36協定締結していない、無効な36協定を締結(推薦する者との協定・代表者選出を適正に行っていなかった)した上で、Xを2年余にわたり長時間の時間外労働(本件期間中2カ月は90時間以上、7カ月は150時間以上、その余は100時間以上)に従事させていた。
・タイムカードの打刻時刻から窺われるXの労働状況について注意を払い、Xの作業を確認し、改善指導を行うなどの措置を講じることもなかった。
・基本給のほか、『職務手当』が支給されていたが、その規程・契約書への明示 賃金規程・・・「職務手当は固定残業の一部として支給するものとする月額5,000~最高70,000円まで」
労働条件通知書・・・「職務手当のうち一部を残業代として支給する 金額27,000円」

<判決のポイント>
・Xが長時間労働により心身の不調を来したことを認めるに足りる医学的な証拠はない。しかし結果的にXが具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、会社は、安全配慮義務を怠り、2年余にわたり、原告を心身の不調を来す危険があるような長時間労働に従事させたのであるから、Xの人格的利益を侵害したものといえるとして、精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円が相当とした。
・賃金規程や労働条件通知書にも固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当しているのか明示されておらず、職務手当のうち固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当するかが明示されたと認められる証拠は無い。 職務手当の支給をもって割増賃金の支払いとしての効力を認めることはできず、割増賃金の算定基礎から除外することはできない。

<実務上のポイント>
本件では、労務管理上特に注意すべき事項が、ことごとく表面化されました。判決では慰謝料が認められたことも注目ですが、未払割増賃金および付加金、遅延損害金計で400万超の支払い義務があるとされました。
長時間労働についての裁判所の姿勢は使用者側に極めて厳しく、労基法改正により残業規制は罰則規定を含め厳格化され、残業代の消滅時効も3年に延長されました。このような残業問題は、 今後も紛争が多発することが当然に予想されますので、規程の見直し・適正な協定の締結・労働時間管理・未払い残業対策等万全な対応が必要です。

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労働判例・裁判例

裁判例【高裁:井関松山製造所事件】有期と無期の賞与・各手当の支給の相違と労働契約法第20条違反の有無

<賞与>
正社員・・・平均36~39万円を支給
契約社員・・・一律5万円の寸志を支給

<手当>
正社員・・・家族手当・住宅手当・精勤手当を支給
契約社員・・・支給なし

<判決のポイント>
賞与・・・合理性あり 長期雇用を前提とする正社員に対し、賞与の支給を手厚くすることにより有為な人材の獲得・定着を図ること、有期雇用労働者は負うべき職務責任の範囲が異なり、正社員への中途採用制度もあり地位が固定的ではない

手当・・・不合理
それぞれの手当の趣旨に沿った要件の下に明確な支給基準が賃金規程等で定められ、一定額が支給されるものであり賞与とは異なり、使用者に裁量がないことから人事政策上の配慮等の必要性は認められない

<実務上のポイント>
働き方が多様化する現代社員においては、例えば精勤手当については、フルタイムと短時間の間で、時間による按分を行うことは認められるのでないかと思われるので、各手当についての趣旨を細部について見直す。

裁判例 【地裁:学校法人近畿大学事件)】育児休業取得を理由とする昇給等未実施の不法行為該当性

<育児休業をした講師に対する昇給>
毎年4月の定期昇給につき、直近12ヶ月のうち育児休業期間が5ヶ月含まれていたため、昇給を実施しなかった。

<判決のポイント>
育介法10条に違反し、不法行為
定期昇給は在籍年数の経過により一律に実施されるものであり、年功賃金的な考えを原則としたものといえる。前の1年間のうち一部でも育児休業をした職員に対し、当該年度にかかる昇給の機会を一切与えないとすることは、定期昇給の趣旨と整合せず、「不利益な取り扱い」に該当する。

<実務上のポイント>
現に就労した労働者との差をどこまで許容されるかまでは明らかになっていないため、1年であれば、6ヶ月以上の出勤期間があれば、対象としておいた方が良いと思われる。

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