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労働判例・裁判例

裁判例【地裁:狩野ジャパン事件】疾患未発症でも長時間労働を理由とする損害賠償請求が認められた例

<概要>
元従業員Xが、2年間にわたり毎月100時間以上残業したことで、精神的苦痛を被ったとして慰謝料等を求めた。裁判所は、会社は長時間労働で健康を損なわないよう安全配慮義務を負うと判断。心身の不調など疾患を発症していなくても、タイムカードの時刻から労働状況を改善指導すべきところこれを怠ったもので、未払割増賃金とともに慰謝料30万円の支払いを命じた。

<どのような会社であったか>
・36協定締結していない、無効な36協定を締結(推薦する者との協定・代表者選出を適正に行っていなかった)した上で、Xを2年余にわたり長時間の時間外労働(本件期間中2カ月は90時間以上、7カ月は150時間以上、その余は100時間以上)に従事させていた。
・タイムカードの打刻時刻から窺われるXの労働状況について注意を払い、Xの作業を確認し、改善指導を行うなどの措置を講じることもなかった。
・基本給のほか、『職務手当』が支給されていたが、その規程・契約書への明示 賃金規程・・・「職務手当は固定残業の一部として支給するものとする月額5,000~最高70,000円まで」
労働条件通知書・・・「職務手当のうち一部を残業代として支給する 金額27,000円」

<判決のポイント>
・Xが長時間労働により心身の不調を来したことを認めるに足りる医学的な証拠はない。しかし結果的にXが具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、会社は、安全配慮義務を怠り、2年余にわたり、原告を心身の不調を来す危険があるような長時間労働に従事させたのであるから、Xの人格的利益を侵害したものといえるとして、精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円が相当とした。
・賃金規程や労働条件通知書にも固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当しているのか明示されておらず、職務手当のうち固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当するかが明示されたと認められる証拠は無い。 職務手当の支給をもって割増賃金の支払いとしての効力を認めることはできず、割増賃金の算定基礎から除外することはできない。

<実務上のポイント>
本件では、労務管理上特に注意すべき事項が、ことごとく表面化されました。判決では慰謝料が認められたことも注目ですが、未払割増賃金および付加金、遅延損害金計で400万超の支払い義務があるとされました。
長時間労働についての裁判所の姿勢は使用者側に極めて厳しく、労基法改正により残業規制は罰則規定を含め厳格化され、残業代の消滅時効も3年に延長されました。このような残業問題は、 今後も紛争が多発することが当然に予想されますので、規程の見直し・適正な協定の締結・労働時間管理・未払い残業対策等万全な対応が必要です。

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