コロナ渦が一段落し、再び以前のように従業員へ出社を求める企業が増え始める一方で、優秀な人材を確保するため、在宅勤務を可とする採用を継続する企業も多数存在しています。
労務DD(労務監査・労務コンプライアンス調査)において、ここ数年の注目調査項目でもあり、また人手不足も健在化し始めているため、これから在宅勤務制度の導入を検討せざるを得ない企業も増えてくることも考えられますので、ここで整理しておきます。
■在宅勤務導入に伴う通勤交通費の考え方
労働契約書上の就業場所 | ||
自宅 | 会社 | |
自宅から会社までの移動 | 通勤ではない | 通勤 |
自宅から会社までの交通費 | 旅費 | 通勤手当 |
社会保険・労働保険の算定基礎 | 旅費のため対象外 | 通勤手当のため対象 |
ここでのポイントは、本来の就業場所がどこであるかに尽きます。
労働契約書上の就業場所が「自宅」であれば、ミーティングのために会社へ行く場合は通勤手当ではなく、単なる旅費です。
労働契約書上の就業場所が「会社」であれば、自宅から会社までは通勤になりますので、旅費ではなく通勤手当として支給することになります。
『それであれば、全従業員について形式上、就業場所を「自宅」にしてしまえば全て経費として扱えるのではないか』と主張する担当者も中にはいらっしゃいますが、これは脱法的な行為で完全にNGです。
社会保険・労働保険の算定基礎への算入・未算入は従業員の標準報酬月額や労働保険の年度更新に多大なインパクトを与える事例でもあることから、従業員ごとの労働条件の実態により慎重に判断することが重要です。